024鋼材その14 亜鉛メッキ

2010年12月22日 井口産業 井口隆一郎

前々回に装飾用メッキの代表ともいえるクロームメッキをご紹介しましたが、今回は防錆用メッキの代表と言える亜鉛メッキについてご紹介したいと思います。

亜鉛メッキは溶融亜鉛メッキと電気亜鉛メッキとに分けられます。
溶融亜鉛メッキはドブズケとも呼ばれ、溶けた亜鉛の浴槽に品物を浸けこんで亜鉛皮膜を付着させる方法です。
ゴム塗装などと似ている手法で全体をそのまま覆ってしまう上に皮膜の厚みもあるので、建築や土木の鉄製品の防錆に広く使われています。

今回、訪問した工場は電気亜鉛メッキと溶融亜鉛メッキの両方を取り扱う工場で、こちらの溶融亜鉛メッキは通常の方法とは違いネジ部の防錆に特化しているとの事です。
通常のドブヅケは約480℃なのですがこちらの工場は約500℃で、この20℃の違いは大きいらしくペンキに溶材を入れたか入れないかぐらいの差がでます。
500℃の亜鉛メッキは品物を浴槽から上げると滴が垂れて亜鉛が落ちるくらいになります。
その上でメッキした品物をラーメンの湯切りをするかのように亜鉛を飛ばすことで不要な亜鉛を除いて完成させます。
ちなみに、落ちた亜鉛は浴槽に再投入して使えるそうです。

酸洗している様子

酸洗された部分だけメッキされます


こちらの電気亜鉛メッキは俗に言うユニクロとクロメートがあります。
クロメートはジンクロとも呼ばれ色が虹に見えたりして綺麗なのですが、この色はシンナー拭きで取れてしまったりとあまり定着する事はありません。
この違いは、電気亜鉛メッキをした後の腐食防止の為のクロメート処理に使われる水溶液が違うだけです。
この処理をすることで亜鉛に発生する白錆を防止する事が出来て、亜鉛に覆われた鉄がより錆び難くなるうえ美観を保てるメリットがあります。
ユニクロよりもクロメートの方が耐食性に優れています。

クロメートの色味

ユニクロの色味

クロメート処理には三価と六価があり日本では規制がない事と安価な為に六価クロメートが主流です。
欧米諸国では三価クロメート以外は受け付けない為に、輸出されるものに関しては全て三価になっています。
成分的な違いについては詳しくはないのですが三価が高い理由について浴槽を年何回かは入れ替えないといけないからという事でした。
六価については継ぎ足して行くことが出来る為、数年に一回で浴槽の入れ替えは済むそうなのでその違いがコストアップの要因になっている様です。

バレルのライン

電気メッキの自動ライン

バレルは上記の写真中程にある500MM角2M程の筒を指し、その筒が可動式になっていて湯洗・酸洗・メッキ・クロメート処理の浴槽に順次回転しながら工程を経て乾燥させるとメッキが仕上がるというものです。
バレルの中で品物同士を通電させることでメッキをするので、ある程度の数量が必要ですが場合によっては違うものを混合させて少量発注に対応しています。
自動ラインは他のメッキでも同じなのですが吊り冶具が命でその吊り方によってメッキの入りが変わってしまうので気をつけないといけません。
この他、7Mの長尺の自動ラインもあって一日のメッキ生産量は100tに上るとの事でした。

電気メッキの手動ライン

三価クロメートの色味

手動ラインは品物の形状によって水抜けが悪かったり入り隅がきつい場合に加工手間や時間調整を掛けられるようにしてあります。
品物によっては入り組み過ぎていてすべて手作業でしなければいけないような事がありますが、ラインに則って作業している工場ではなかなか難しいのが現状の様です。
こちらの三価クロメートはユニクロに近くなるように色を選んでいるとの事で、クロメート水溶液メーカーの製品数だけ種類があるらしいです。
一般に亜鉛メッキは塗装下地としてであったり、そこまで装飾性を求めない場合に使われてきた経緯がありますが最近ではその傾向も薄れてきていて、塗装下地であったものが装飾として使われていて亜鉛メッキの種類もそれに応じて種類が増えています。

リン酸仕上げから始まり、緑色クロメートや黒色クロメートなど試してみたい仕上げは数あるのですが、なかなか費用対効果が合わなかったりそれぞれの工場独自な技術である事も多くなかなか実現に至らなかったりします。
強い要望によってのみにそう言った新しい試みであったり古い技術を復活させる力があると思うのです。
大変だからと諦めるの簡単ですが頑張ってみることで新しい世界が開けるかもしれませんね。

と、言いながら現実では「そんなの無理ですよ~」と連発する今日この頃です。

今回は有限会社朝日鍍金工場様に写真協力頂きました。
いつもお世話になりありがとうございます。


今月の鋼材相場

上げ

先月は先行して相場を読んでしまったが、今月は完全に上げ局面に入った。
実際はお願いベースでの上げにはなっているようだが来月にはメーカー販価が反映されてしまうであろう。
スクラップの強含みも収まらず、強気の状況が続くと思われる。
年末にきて多少なり、順調が見られたのに嫌気を見せられないと良いのだが。

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鋼材その14 亜鉛メッキ への2件のコメント

  1. 2010年12月22日
    EXIT METAL WORK SUPPLY 清水薫さんがコメントしました。

    いつも勉強になります
    また 年末にドブヅケ 一発 お願いしますね

  2. 2011年1月5日
    special sourceさんがコメントしました。

    会長、ご心配させてしまっていた亜鉛メッキの床、無事終了しました。
    今年ははじめからとても厄介なものをお願いしておりますが、
    どうぞ宜しくお願いします。
    年末は本当にお疲れさまでした。
    来てくれて嬉しかったです。

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